「旅を行く」
黄河文明と甲骨文字(安陽市の殷墟):高岡一眞
  人類が出現したのは数十万年前、文明が起こり始めたのは数千年前と言われている。世界4大文明の一つ黄河文明は農耕に適した黄土層を形成する黄河流域に生れた。その証が河南省安陽市にある。
  甲骨文字は河南省安陽市の郊外にある殷墟跡から、1899年に発見された。文字は亀甲や牛骨に刻まれていたので甲骨文字と呼ばれている。発見された甲骨文字の数は約4500字で識別できるのは約1700字である。また、現在の漢字の原型であることが判ってきた。甲骨文字の一例を下の写真に示す。文字は甲骨文字を使って彫った漢詩であり、「天降霖雨燕子帰」と読む。
殷王朝はBC1500年頃からBC1100年頃にわたって栄えた王朝である。この殷墟跡からは文字の他にも青銅で造った鼎(かなえ)などの青銅器が多数発見され、高度な青銅鋳造技術を持っていたことがうかがえる。また殷墟の壮大な宮殿跡や王墓からみて強大な政治権力を持っていたと思われる。
  古代文明の成立のめじるしは@国家の成立A文字の発明B金属器の使用の3条件を備えていることであると言われている。北京より南へ約500kmのここ安陽市周りは黄河文明発祥の中心地と言えよう。

上の漢詩は甲骨文字で書いたもので次のように読む。
(右から縦に)。
天降霖雨燕子帰
(初夏の空に恵みの雨が降り、親つばめは軒下の巣で待つ子の元へ帰る)と詠ったものである。
甲骨文字の記念碑

記:高岡一眞